キャンパスリーダーの独り事

途を分ける “上” の人間観  No.122

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 「人間力」を育むというと聞えはよいが、この途、実は容易ならざるものなのである。「人間力」は、楽状態の中で育まれるものではないからだ。このことは、自分自身とちょっと向き合ってみれば、誰の目にも明らかだと思う。
 我われ人間が有する力を出すのは、問題に遭遇したときである。否応なく問題を抱え込むことになって、困り、悩み、苦しんだときだ。問題が大きければ大きいほど、有らん限りの力を出さざるをえなくなる。主体的でならざるをえなく、創造的にならざるをえなく、自ずと個性的な存在になってしまう。何事もない楽状態においては、それらを出すことはない。
 即ち、我われ人間が有する力は、さぁ出そうと意識して発揮されるものではなく、多くの場合、差し迫られた状況によってときに無意識のうちに自ずと出てくるものだ、ということである。
 そのようにして問題を乗り越えていくことが人間にとっての試練であり、それを重ねていくことこそが「人間力」を育んでいく過程であり、それこそが人びとの人生の質を高めていく途だと思う。
                         □
 人びとに宿る「人間力」は、“上” 、即ち親、上長による「人を大事に」のいずれかの人間観に決定的に支配されて、育まれる途と枯ればむ途に分けられていく。
 “上” の立場の誰もが、人びとの「人間力」を育む途を是とするであろう。ところがである。多くの人たちの「人を大事に」は、人びとをして、困ることなく、悩むことなく、苦しむことなく、楽を与え続けることを是とする人間観なのだ。それこそが、その期待とは逆の結果を生み出していくことになるのである。
 私が「狂っている人間観」と言う所以はここにある。あのジャック ・ ウェルチ氏が言うところの「偽りの親切」* も、この辺のところを指しているのだと思う。
 現状を見渡すと、この人間観に立つ人がやたらと目立つ。
 家庭においては、我が子にとってのせっかくの試練を親が引き受けてしまう。もちろん可愛さの余りにであるが。それに負けず劣らずなのが、おもねってであろう。
 職場でも同じだ。部下にとっての試練を上長が引き取ってしまう。まずは失敗されては困るから。それに加わるのがおもねってであろう、問題に直面させ、困らせて、部下に嫌われるのは嫌だというわけだ。
 それらを括って言い表せば、この「人を大事に」の人間観の根元は、自己防衛意識とでも言うべき代物だということになる。即ち、自分満足のためのものではないか。
* 日本経済新聞『私の履歴書』(2001.10.25.)
(『人間力』第二章一より抜粋、少し加筆)

15.12.7.

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