キャンパスリーダーの独り事

部下の力の発揮の邪魔をしている①  No.118

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 上長による部下への口出し手出し、その80パーセントが「無用」、いやそれどころか部下の力の発揮の「邪魔」になっている、と断言したい。
 2歳児がナイフでエンピツを削ると仮定しよう。親がエンピツとカッターナイフを与えただけで放っておいたらどうなるか。削れないどころか、危ない。親は手を子どもの手に添えて削らねばならない。この場合は有用な手出しだ。同じ子どもが絵を描くのに親が手を添えたらどうなるか。小学生に親が2歳児に対してと同じようにやったらどうなるか。「無用」の口出し手出しということになる。
 こんな些細な例からも、無用の口出し手出しが、人びとの力の発揮の、主体性の邪魔になることは明らかだ。
 それにしても、有用か無用かぐらいは上長の誰もが考えている、と思われるであろう。とんでもない。呆れるばかりだ。
 この手の「無用/邪魔」は、部下を持つ多くの人たちの体に強く絡み付いて離れないようだ。組革研ではそれをきわめて赤裸々に指摘されるのだが、ときとして解任までされるのだが、それで懲りてもまたすぐにくり返す。
 そうなってしまうのには、三つのことがあると思われる。
 その一は、その意識さえないらしい人が大部分だということだ。その場になると、口出し手出しが自動化されてしまうらしい。というのは、傍から言われて初めてそれに気づくという人が大部分だからである。日々をそのように過ごしているうちに、そういう体質に固まってしまったのだろう。こうなったらもう「口出し手出しロボット」としか言いようがない。
 その二は、たとえ考えたとしても、部下の上辺に現れている力だけを見て口出し手出しに走ってしまうことだ。部下は管理されて「道具力」しか出せないでいるのに。人びとに潜んでいる「人間力」に目を注ぐことがないらしいのだ。
 その三は、それは人間の欲望の一種らしいということだ。自分がわかっていると思っていること、あるいはこうしなければと考えていることを口出し手出ししないことは、苦痛であることのようだ。
 アサヒビールの社長であった樋口廣太郎さんは会長になってから、「口を出さないで黙っているのは苦しい。エネルギーがいる」と言って、執務室を本社から離されたそうだ。さすがである。平井信義さん(児童精神医学者)は、親の子に対する無用の口出し手出しについて、「無言の行」と言って辛抱することの重要さと大変さを鋭くついていた。
 組革研には、企業内のそれらがよく映し出される。
 組革研への「リーダー参加」は、経営者層や部課長という立場の人だ。この人たちは以前に組革研を体験しているので、頭では重々わかってはいるのだが、体に染み込んでいるものは管理体質である。
 チームリーダーとなって10人のメンバーを部下にしたこの人たちの動きの初期は、まさに無用な口出し手出しの連発だ。企業内にあっては優秀な、しかも選ばれた人たちだから、注意すればすぐわかる。しかしそれは30分ともたない。すぐまた始まる。
 隠れてそれをやる人などは数知れない。隣りのチームに忍び入ってそれをやる人には驚かされた。誰もが知っているであろう大企業の海外ブランド事業部長である。自らガムテープを口に貼り付けて口出しを抑えた人もいた。この人もまた大企業の印刷機製造部長である。いずれもが人柄は素晴しい人だ。
 注意されただけで「無用」が治まった人は、今までに指折り数えるほどだ。
 この人たちに対して、私の口ぐせになってしまった言葉がある。「あなたのチームメンバーはそんなことを自分で考えることができないと、あなたは思うの?」、「逆の立場になって自分がこうやられたら、あなたはどう感じるの?」。返事は判を押したように、「できると思います」、「いやです」である。
 人びとの動きの変化が非常に速い組革研では、リーダーの変化によるメンバーの動きの変化は、手にとるように見える。無用の口出し手出しが止まると、チームの中には2、3時間のうちに主体性が芽生えてくる。
(『人間力』第四章四より抜粋、少し加筆)

15.11.10.

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