「自然現象が間違ってました」と、学生が教授のところに言ってきた。光技術の世界的権威である西澤潤一教授からお聞きした話しである。
科学の研究や勉強の“神様”はその対象が示す現象そのものである。その現象が間違っていると言うのはどういうことか。外から詰め込まれた知識を“神様”としてしまっているということではないか。この完全に狂っているものの見かた、どこから生じたのであろうか。
知識やそれを記した教科書には真如が存在するのではない。自然科学はもとより社会科学でも、新発見があればそれは即一変してしまう。にもかかわらず、そこに存在する答だけが唯一絶対の“神様”とされてしまっているのであろう。
□
「先生、この経済学の問題、昨年と同じですが? 」と聞いた秘書に対する教授の返事は、「かまわないよ。今年は正解が違うから」。米国のある大学でのことだ。
□
学校を通じて子どもたちの手に渡っている小学生の「月刊教材」から。私自身が親としてかかわった一例。
鉢仕立ての朝顔の絵がカラーで描かれている。細い支柱が中心に立ち、そこに蔓が時計回りで巻きついて、葉が数枚、上のほうに赤い花と緑の花が咲き、蕾が下のほうに二つ付いている。
この絵の中に間違いがあるから本ものと比べて答えろ、というわけだ。そう言いながら、次のページには答が出ている。それによると正解は、①蔓の巻きかたが反対、②花は下から咲いていくので花の下に蕾があることはない、③一株の朝顔に違う色の花は咲かない、の三つだという。
娘が本もので調べてみると言うので、私も付き合ってみた。
そこで見た事実は、教材が正解としている三つのうちの二つとは異なっていた。一致しているのは一つ、蔓の巻きかただけ。花の色については淡いピンクと白にちかい花が咲いた。花の咲く順序も違っていた。咲いている花の根元寄りに明らかな蕾があったので、数日待ったところ、これが見事に咲いたのだ。もちろん一本の株からである。他の株との混同を懸念し、絡み合っている蔓を整理してその一本を完全に独立させての観察であった。
教材が間違っているなどと言っているのではない。娘が観察した例は、専門家ならば容易に説明しうるだろう。突然変異であったのかもしれないし、蕾のほうは虫のいたずらかもしれない。私の関心はそこにあるのではない。
重要なことは、もしこれが試験であれば、教科書の答のとおりに答えなければXになってしまう、という一点に尽きる。
子どもの誰もがいい点をとりたい。親もとらせたい。なにしろこの社会では、学校の成績の良い子がいい子とされるのだから。となると、子どもたちはどうするか。自分自身でしかと見たもの、触れたものを否定して、自分の外に用意されているものに合わせていくことになっていく。
( 『人間力』第4章2より抜粋、少し加筆 )
只今、サイトの更新を一時停止しております。
改めて更新を再開する予定ですので、少々お待ち下さいませ。
どうぞ宜しくお願い致します。
対談 あなたの会社はなぜ『メンタル不調』者を量産してるの
著者:藤田英夫・𠮷野 聡 発行:シンポジオン 発売:三省堂書店/創英社
脱「三逆リーダー」
藤田 英夫 (著) 発行:ダイヤモンド社 発売:ダイヤモンド社
「個全システム」によるミーティング革新
藤田 英夫 (著) 発行:ダイヤモンド社 発売:ダイヤモンド社
不感症体質に挑む「人間力」全員経営
藤田 英夫 (編) 発行:シンポジオン 発売:創英社/三省堂書店
経営の創造
藤田 英夫 (編) 発行:シンポジオン 発売:創英社/三省堂書店
第3の組織論
小林 茂 (著) 発行:シンポジオン 発売:創英社/三省堂書店
人間力をフリーズさせているものの正体
藤田 英夫 (著) 発行:シンポジオン 発売:創英社/三省堂書店
人間力―そこにどう火を点けるか
藤田 英夫 (著) NTT出版
人を人として―指示待ち人間を目覚めさせるもの
藤田 英夫 (著) PHP研究所
「状況」が人を動かす―管理からリードへ
藤田 英夫 (著) 毎日新聞社
Copyright ©2018 MANAGEMENT CENTER Inc. All Right Reserved.