仕事で毎月、定期的に奈良に出かけている。奈良ホテルが定宿なのだが、同ホテルはかつての興福寺境内に位置しているので、今の興福寺は目と鼻の先だ。間近かに見える五重の塔が出色の偉容をなしている。「あの塔には色気がある」と言って友人に笑われたこともあったが、それに眺め入りながらの朝食は幸せのひと時だ。
興福寺にはもう一つ、私にとって幸せなところがある。国宝館だ。仏像となれば奈良だが、その中でも珠玉の仏像館だと思う。東京の国立博物館で一大フィーバーを起こした「阿修羅」もここの像だ。
私はよくここを楽しませてもらう。と言っても冬に限ってのことだ。春夏秋はごった返す観光客たちのお喋りが煩さくてたまらないからだ。奈良の冬は足冷えがすごい。そんな時の国宝館には人がごくごく少ない。数々の仏に囲まれた自分一人という静かな至福のひと時を過ごすことができる。冷たいのに堪えながらだが。
昨日、同行した妻と妹に付き合って国宝館に出かけた。ともに相当の仏像尊崇者である。入館直後、「あれぇ」と思った。梅雨入り直前の観光シーズンなのに、静かなのだ。外には観光バスが何台か留っていた。進むにつれて目に入ってきたのが、係員が掲げるプラカード「お静かに」であった。駄弁り連中には注意を促していた。私は思わず「ありがとね」と、その係員の耳元で呟いていた。
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わが家の散歩距離には、根津美術館、国立新美術館など美術館が10もあろうか。私は美術品には強く心引かれる。けれど、あまり見には出かけない。見に行こうと思うとまず耳に付いてくるのが、まずはおばさんたち、そしておじさん連中のあの駄弁だからである。光琳の「燕子花図」の前にして「あっこれこれ、あったわよぅ」などと大声を響かす。
力のある絵は辺りの空気までをも支配する。そんな声はその空気を瞬時に掻き裂いてしまう。
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美術館で平然と駄弁る人たち、本当に美を味わっているのだろうか。「見てきた」「見たことがある」の話の種づくりなのかもと思えてきてしまう。さらに言えば、「見さされている」のではないかとまで思えてくる。
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