東欧革命直後の1990年、2度ほどその地に出かけてみた。
冬のブカレストに滞在中のこと。通訳といっても英語と日本語が片言のルーマニア青年と車で小一時間ほどの何とかいう保養地に行ってみた。散歩の後、この辺で随一として知られるレストランで昼食をということになった。以前は共産党幹部専用のレストランであって、かつて通訳氏は2、3度ここに連れられて来たことがあるとのことだった。
建物はりっぱだが電灯と暖房は消されている。どこからか吹いてくる隙間風にコートの襟を立ててテーブルについた。向う側に熟年夫婦とおぼしき一組の客がいるだけ。10分も待たされただろうか、やっとメニューがテーブルにおかれる。中味はわからないが、2種類の定食のみであることだけは一べつしてわかった。注文してまたしばらく待たされているところに、身なりの悪くない5、6人の男性客一団が入ってきた。ところが、メニューを見ていた彼らは、いきなりその場をすうっと立ち去ってしまったのである。
何だろうかと通訳氏に尋ねてみた。彼いわく「向う側の夫婦も今その話しをしていた。それによるとあの一団は『いつも同じメニューで飽きた。何でもいいから他へ行こう』などと話していた」と言うのであった。
共産党時代からの経営者の奥さんだというサービスの女性に聞いてみると、何週間(何か月?)も2種の同じメニューであると、なんとも堂々としている。
「共産党幹部用レストランの時にはどうだったの」と通訳氏に聞いてみた。すると彼は、伸ばした両手をめいっぱい拡げてみせた。それほど長いメニューだったというのだ。
かつても今も同じ経営者である。その同じ人が、ある状況下では両手に余るほどのメニューを用意し、別な状況ではたったの2種、それもいつも同じ中味で用を足そうとしている。これはいったい何をもの語っているのだろうか。
前者は強い管理の下であり後者はまあ自由の下である、に私は注目した。管理されて動く体質に固まってしまった人は、管理から解放されただけではもっとダメになる、ということである。
昨日まで外力によって、教えられたとおり、指示されたとおりに動いてきた人たちに、今日からいきなり自主を求めても、当面それは無理な”注文”だということだ。悲しいかな、そういう状態になっている人たちの”メニュー”には、「教えられ待ち」「指示待ち」の2種しかないのである。
企業人のフリーズされてしまっている「人間力」をいかに解凍していくか。これこそが組革研の使命である。
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