キャンパスリーダーの独り事

「横から目線の組織化」のすすめ
――リーダーの「足し算」・2  No.213

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  このコラムの前号は 「リーダーの 『引き算』そして『足し算』」であった。 その中で 「リーダーの使命は、部下に仕事を 『やりきらせる』ことにある。 そうさせねば、仕事がおぼつかないだけではなく、部下の人生も台無しになってしまう」――そう記した。
  この 「やりきらせる」は、マネジメントによって即ち、 「管理」の下では 「人を道具として」になってしまうが、私が主唱する 「リード」(外来語の「リード」とは異なる)※1の下では 「人を人として」となる。
  その 「リード」における 「やりきらせる」ための中軸となるアプローチを、ここに略記しておく。 題して 「横から目線の組織化」。

  組織の中の一人ひとりには、三方向からの力の作用がありうる。 “上” からの力、横からの力、 “下” からの力である。 斜めからの力もあるかもしれぬが略す。
  人間にもたらす力として、この中で最も弱いのが “上” からの力、時として最も強いのが “下” からの力、それ相当に強くかつまことに実用的であるのが横からの力である。
  と言うと、現実には上からの力によって人びとは動いているではないか、ということになろう。 その通り。動かざるをえないからだ。 そこに権力が作用しているからである。
  「管理」の下では、上長が部下を動かす主要な力は権力という 「他力」だ。
  では、 「リード」においては権力の作用はないのか。 ある。 と言うのは、一つは、人間であるリーダーにとってその種の意識をゼロにすることは不可に近いということ。 もう一つはそれ以上に、たとえリーダーの意識がどうあっても、 “下” という立場は、無意識のうちに “上” を権力が付きまとっている存在として見てしまうことだ。 したがって 「リード」においても、意図せざる権力による作用は付いて回る。
  権力によっては人間の心は動かない。 その結果として人びとから出てくる力は、いたしかたなく動く 「道具力」でしかない。
 “下” からの力がなぜ強いか。 人間から発せられる 「自力」であり、平常のそれには権力による作用が無いからだ。 だが、それを組織運営に資するには、かなりの腕がいる。
  そこで、横からの力ということになる。 その横組織化である。 この場合の “上” からの働きかけは、横どうしの力を相互作用させ合い、それに拍車をかけていくという、間接作用する力だ。
  即ち 「横から目線の組織化」である。
  かつての農村などでの芋洗いをイメージしてほしい。 「対象」たる芋を桶に入れ、そこに水を充分に加え、攪拌棒で掻き回す。 無作法な表現だが芋が「人びと」、水が「状況」、桶が「課題」、攪拌棒が「リーダー」である。
  生々しい状況という水が行き渡った課題という桶の中で、リーダーの攪拌棒によって人びとの 「人間力」が相互作用し、 “連鎖反応” を起こしながら、思いを共有して目標に向かっていくことになる。
  この芋洗いをミーティング化したのが 「個全システム」※2である。
  「個全システム」の本質を知ってこれを使えば、脱「三逆リーダー」※3の助けになるところきわめて大である。 「三逆リーダー」図のAとCは激減するであろうし、Bに至っては、それが異次元的なものに変貌することを実感できると思う。 この辺のところについては、 「組革研」参加者ならば誰もが知るところであろう。
  「横から目線の組織化」による願っても無い副効用について追記しておく。
  「パワハラ」なる言葉が今、一人歩きしている。 リーダーが部下に仕事をやりきらせようとするとき、うっかりするとこの言葉に遭遇しかねない。 “上” からの力だからだ。 横からの力は、ここに大いなる本領を発揮することになると思う。

  とはいえリーダーが、部下に 「やりきらせる」という使命から逃げ腰ではダメだ。 くり返し記すが、「リード」即「人を人として」のマネジメントの主体はリーダーにある。 「個全システム」はその道具に過ぎない。くれぐれも道具に寄り掛からぬことを願う。
  リーダーは、仕事と部下の人生を一時とはいえ手にする。 その “上” の姿は、 “下” からは素通し硝子がごとく丸見えだ。 その逆、 “上” から “下” は曇り硝子がごとくよくは見えない。 天は弱い者に強い力を与えたようだ。

18.11.14. 

藤田英夫 

  ※1 「リード」/筆者が1971年に創唱した「マネジメント」。 その概念については 『「状況」が人を動かす』(1989年毎日新聞社刊)、『人を人として』(1998年PHP研究所刊)、『人間力をフリーズさせているものの正体』(2015年シンポジオン刊)に詳しい。
  ※2 「個全システム」/筆者が1983年に開発したミーティング手法。組織革新研究会ではこれを活用し続けている。『「個全システム」によるミーティング革新』(1918年ダイヤモンド社刊)に詳しい。
  ※3 脱「三逆リーダー」/『脱「三逆リーダー」』(1918年ダイヤモンド社刊)に詳しい。

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