「危機」は集団を強くし、革新を促す。 反する 「安定」は集団を弱くする。 この例にはこと欠かない。
(このコラムの今回は、1989年刊行の拙著 『状況が人を動かす』からの転載が中心となっております。)
かつての石油ショックによって危機に立った日本経済が、それによって強くなるとは、そのころ誰に予測できたであろうか。 当時の米国のテレビニュースは、煙突が林立する日本の工場群を写し出して 「これによって日本経済は……」と、あたかも日本の終焉かと思わせるような言葉を流していた。
そして円高。 相次ぐ石油ショックを乗りきったことによって、日本経済は危機によって体質を強める発想と術をものにしてしまったのであろうか、1985年にはじまった円高ショックも、その時々では極限とも思われる企業人の努力によって瞬時に吸収し、乗りきってしまった。 それによって、さらにいっそうその発想と術を我がものにして、1987年秋からはじまった新・円高時代と言われる対ドル120円台を迎えた。
円高が技術開発を加速し、体力強化に動いている様子を紹介するある大企業のトップは、 「5パーセントのコストダウンなら改善で凌げる余地は残るが、30パーセントともなれば、発想を元から変えなくてはならない」としていた。
状況が発想転換を “強制” しているのだ。
この反対の安定は集団を弱体化していく。
数年前の米国の農業政策の転換は、それまでの保護から市場原理の導入へのものであった。 70パーセントが学卒だという農業経営者への安定化を意図した助けが、革新を妨げ農業力を弱体化してしまったという認識のもとに行われたものであったと聞く。
組革研で私は、 「他のチームに勝ちたければ、自分たちの研究成果やアイデアをどんどんオープンにしてしまえ」と、冗談半分でよく口にしている。
安定化のための助けは、意図に反して、その対象に 「人間力」を発揮させないという結果をもたらす。 答や知識を与えるのも元より。
(『状況が人を動かす』第五章より抜粋、少し加筆)
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