「横から目線の組織化」はマネジメント、即ち人と組織の力を引出し、増幅させていくための、きわめて有効かつ実際的な発想法である。 その 「概念」と手法の中軸となる 「個全システム」について、10週にわたって連載してきた。
「個全システム」の過程の半分は話し合いだが、一般に行われているミーティングと 「個全システム」のそれでは全く異なる。 米国流の 「ディベート」、いま流行の 「〇〇大学白熱教室」などと比べても、討論の奥行への導入において 「個全システム」ははるかに勝ると、私は思っている。 まさに口角泡を飛ばすことになる。
とはいえ、日常的な全てのミーティングをこのシステムで行うのは実際的ではない。 ここ一番という大事な会議やミーティングのためのものである。
くり返しになるが、 「個全システム」の仕組みを図解しておく。 ミーティングメンバーを10人と仮定しての一例。
上をちょっと見るといかにも煩雑そうだが、実はシンプルなものだ。 要は 「個」と「全」 の仕分けにある。 したがって、慣れればわけなくできる。 組革研はこれによって運営され、はや500回を超えていることはご承知のとおりだ。
あらゆる手法は、その使い手が形式の虜になってしまっては生きない。 さりとて独り善がりに崩してしまってもだめだ。 その典型例がKJ法だ。 「KJ法」は 「事実の統合」という素晴らしい発想法なのだが、巷ではそれが 「観念の分類」という台無しなものにされてしまった。
その手法が有する特性を確と押さえ、状況を見すえて自在に変形の試行錯誤を重ねていくことだ。 そのために、この連載の終りに 「個全システム」活用に際しての留意点を記しておく。
その最大ポイントは、 「個」と「全」 のステージを曖昧にしないことだ。
留意点(1) 日本のお家芸である 「摺り合わせ」とは逆だということ。
摺り合わせでは多くの場合、今までの常識が巾を利かせ、個々人の個性を削り取っていく。 それに対して 「個全システム」は、個性どうしを向き合わせ、その統合による独創性を狙っているのだ。 私が 「衆合天才」と大げさに表現する所以はここにある。
摺り合わせによって、見かけ上は一つの結論に達するだろう。 だが事と場合によっては、それらは妥協や諦めの産物であって、事の掘り下げにもならなければ、したがって個の思いの結集にはなりえない。 その弊害は実行段階におけるがたがたとなって現れてくる。
ついでに記せば、共有化は、言葉の上っ面でわかったとなっても実現できることではない。 共有化ができていないことを互いに認識することがその出発点だ。
いわんや多数決などであってはならない。 そんな観念は捨てること。 多数決イコール民主的だとする人がいるが、なんとも安っぽい話だ。 多数決は、①根本から利害が対立している、②大勢で話し合うことができない、③法の定めによる、 そのような場合の致しかたない方法ではないか。
留意点(2) 「書く」に関して。 このハードルは四つ。
① なんで書く必要があるのかなどと抵抗する人がいる。 その価値をわかっていないからだが。
② 書くことを苦手とする人、むずかしく表現をする人がいる。 慣れれば容易に解決できるのだが。 どうしてもだめな場合には、喋らせて誰かが代筆することだ。
③ なるべく大きな紙に一件一葉で書く。 これを疎かにする人が多いが、これはこの手法の特性にかかわることだ。
④ 相談しないで独自に書く。
留意点(3) 「X」を打つに関して。
① 打てない人がいる。 慣れれば何でもないことなのだが、職場の中で最初にやるときには、戸惑いどころか抵抗に出会うと思う。 組革研からその声の一端を紹介する。
② 相談しないで独自に打つ。
最後に、 「個全システム」におけるリーダーの二つのトップダウンについて記しておく。
トップダウン(1) X打ち(ときには〇打ち)の 「評価基準」を明確に明示する。
評価基準は物差しだ。 物差しを共有していなければ評価はめちゃくちゃになってしまう。 なるべく大きな紙にていねいに大きく書いて掲示しておくこと。
「評価基準」は、ミーティングの課題とメンバーが書いたものとのギャップを埋めるものである。
リーダーがこれを明示するまえに、メンバー自身にそれを出させてみるのも大いによい。 ただし、それを決めるのはリーダーだ。
トップダウン(2) 「分離」のグルーピング。
グループ内では同質、グループ間では異質の集団になるように。 グルーピング後の移動は大いによい。 そのためにも、各メンバーの状態をよく見ていることだ。
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